ちょっと、ウィルスに対して一部正しく理解していない部分があったのでアップデートしたいと思います。
抗生物質の発見 P182
コッホの原則
①ある一定の病気には一定の微生物(細菌)が見出せること。
②その微生物を分離し、感受性のある動物に感染させて同じ病気を起こさせること。
③その病巣部から同じ微生物が分離されること。
ペニシリンの発見(英国人医師フレミング)シャーレーで培養中の黄色ブドウ球菌に青カビが生えていて、アオカビの周辺だけ黄色ブドウ球菌が発生していなかった。→アオカビ生成物質が黄色ブドウ球菌の生長を妨げたのではないか?→実験の結果、アオカビには黄色ブドウ球菌の増殖するときに働く酵素の発生を妨げる抗菌物質(抗生物質)が含まれていた。
『動的平衡』福岡伸一著 2009年 木楽社/第6章 ヒトと病原体の戦い
同書の細菌とウィルスの違いを記述している部分をかいつまんで、表にしてみると
細菌 | ウィルス | |
大きさ | 0.5-5um 細胞の1/10-1/100 の大きさ | 30-50nm 細菌の1/100 の大きさ |
細胞性 | あり(細胞膜など) | なし(脂質で覆われている) |
核酸 | DNAとRNAの両方が存在 | DNAかRNAのどちらか片方が存在 |
増殖 | 自己増殖可能2n(2倍体) | 他の細胞に寄生した時のみ増殖可能 一段階増殖(コピーがコピーを作る) |
エネルギー産生 | 可能 | 不可能(宿主細胞の作るエネルギーを利用) |
抗生物質 | ワクチン(いわゆる抗生物質は効かない) |
ウイルスは生物か?
前略
科学者は病原体に限らず、細胞一般をウェットで柔らかな、大まかな形はあれど、それぞれ微妙に異なる、脆弱な球体と捉えている。ところがウイルスは違っていた。それは、ちょうどエッシャーの描く造形のよに、優れて幾何学的な美しさをもっていた。あるものは正二十面体の如き多角立方体、あるものは繭状のユニットがらせん状にに積み重なった構造体、またあるものは無人火星探査機のような構成。そして同じ種類のウイルスはまったく同じ形をしていた。そこには、大小や個性といった偏差がないのである。なぜか。それはウイルスが、生物ではなく限りなく物質に近い存在だからである。
後略
『生物と無生物のあいだ』福岡伸一著 2007年、講談社現代新書
「濾過性病原体」の発見
ヒトの細胞 30-40um
細菌
ウィルス
①非細胞性で細胞質などはもたない。基本的にはタンパク質と核酸 からなる粒子である。
②他の生物は細胞内部にDNAとRNAの両方の核酸が存在するが、ウィルスは基本的にどちらか片方しかない。
③他のほとんどの生物の細胞は2n(2倍体)で、指数関数的に増殖するのに 対してウィルスは一段階増殖する(コピーがコピーを作る)
④単独では増殖できない。他の細胞に寄生したときのみ増殖できる。
⑤自分自身でエネルギーを産生しない。宿主細胞の作るエネルギーを利用する。
中略
細胞を形成していないということは、活動、つまり代謝をしていないことを意味する。そんなものータンパク質と核酸からなる粒子ーが生物だろうか?
この点については、拙著『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)で論じたので、結論だけ書くと。本のタイトルどおり、生物と無生物の中間なので、言い換えれば、生物とも言えるし、無生物とも言える。それは、私たちが「生物」をどのように定義するかによってかわってくるのである。
『動的平衡』福岡伸一著 2009年 木楽社/第6章 ヒトと病原体の戦い