第3回目の土壌診断結果です。今回はじめてJA全農さいたま(川越)JA埼玉中央(川島)のご担当者の方々から直接説明をいただくことができた。貴重な経験をさせていただきました。この説明や質疑などを通じて分かったこと。
- 結論
- 北の畑、南の畑とも「ダメではない」
- 土壌改良には何年もかかる。継続して努力必要。
- 個別
- pHはややアルカリの中性。今後、更に肥料を入れていくと酸性になっていくはず。土地改良資材を入れるほどではない。埼玉県施肥基準の標準量を施肥すれば良い。
- 電気伝導度(EC)は途中の硝酸イオンを測定。つまり、窒素量の代替特性。
- 北の畑の石灰・苦土多めは昨年の苦土石灰大量施肥の影響
- 北と南の畑の施肥方針の違いは緑肥(てまいらず)→北は加里減少。南は逆に上昇
- CEC(陽イオン交換容量)
- 塩基飽和度は100%超えている。土壌の肥料キャパ能力を超える肥料がある。
- 考察
- 帰宅後、土づくりの農業大学校推薦図書*1で加里の増加・減少原因を考察。増加原因は牛糞堆肥の大量投入、減少要因は緑肥の導入であると推測できる。
- 塩基飽和度と塩基バランスの計算は改めて行う。
規格 | 3回目 | 2回目 | 1回目 | 改善 | コメント | |
pH(H2O) | 6.00-6.50 | 7.1 | 6.9 | 7.7 | ○ | 中性。改善傾向。 |
電気伝導度(EC) | 0.00-0.30 mS/cm | 0.14 | 0.30 | 0.21 | ◎ | 良好 |
石灰(CaO) | 190-320 mg/100g | 290 | 280 | 350 | ◎ | 良好 |
苦土(MgO) | 30-50 mg/100g | 52 | 66 | 84 | ◯ | 改善傾向。施肥設計通り |
加里(K2O) | 25-40 mg/100g | 84 | 102 | 190 | △ | 改善傾向。緑肥の効果か?まだ規格外 |
トルオーグ燐酸 | 20-40 mg/100g | 37 | 41 | 71 | ◎ | 改善。規格内。 |
CEC(推定) | 10-25 me | 13 | 14 | 16 | ◎ | 規定値内 |
塩基飽和度(%) | 71-86 % | 110 | 110 | 130 | △ | 改善したが、まだ規格外。 |
石灰/苦土比(重) | 7-10 | 5.6 | 4.2 | 4.2 | ×→◯ | 苦土分が多い。しかし、施肥設計通り。 |
苦土/加里比(重) | 1-2 | 0.6 | 0.6 | 0.4 | × | 加里の量が多いが、改善傾向 |
規格 | 3回目 | 2回目 | 1回目 | 改善 | コメント | |
pH(H2O) | 6.00-6.50 | 7.40 | 7.20 | 7.20 | △ | アルカリよりの中性。やや悪化。 |
電気伝導度(EC) | 0.00-0.30 mS/cm | 0.14 | 0.11 | 0.13 | ◎ | 良好、規定値内 |
石灰(CaO) | 190-320 mg/100g | 320 | 290 | 300 | ◎ | 良好、規定値内 |
苦土(MgO) | 30-50 mg/100g | 76 | 45 | 53 | △ | やや過剰、規定外 |
加里(K2O) | 25-40 mg/100g | 120 | 75 | 77 | △ | 更に悪化。規格外 緑肥実施せず |
トルオーグ燐酸 | 20-40 mg/100g | 60 | 25 | 33 | ◎ | いきなり悪化、規定外。 |
CEC(推定) | 10-25 me | 15 | 13 | 13 | ◎ | 良好、規定値内。 |
塩基飽和度(%) | 71-86 % | 120 | 110 | 110 | × | 改善せず |
石灰/苦土比(重) | 7-10 | 4.2 | 6.4 | 5.7 | △ | 悪化、規格外。 |
苦土/加里比(重) | 1-2 | 0.6 | 0.6 | 0.7 | × | 苦土の増加以上加里が増加。悪化傾向。 |
3回目
2回目
1回目
塩基飽和度と塩基バランス P108
こう完成石灰・苦土・カリの適量は土の胃袋であるCECの大きさにより変化するので、絶対量ではなく、塩基飽和度と塩基バランスから評価する。人の健康には「腹八分目」と言われるように、土の塩基飽和度は80%前後が最適で、その内訳は石灰飽和度50-60%、苦土飽和度は10-20%カリ飽和度5-10%程度になればよい。なお、塩基バランスは各塩基の質量比ではなく、イオンの電化費で、演習2のように算出する。塩基バランスのうち、特に注意したいのが交換性苦土とカリの比率(苦土・カリ比、Mg/K)で2〜6が適当である。家畜分を原料とする堆肥を多量に施用している畑やハウスでは、交換性カリが過剰となり、Mg/Kが低下しやすい。そのような場合には、まず、堆肥の施用を減らすとともに基肥・追肥のカリも削減する。Mg/Kの低下原因が交換性マグネシウムの欠乏である場合には、量産メグねしうむ(硫マグ)か水酸化まずねしうむ(水マグ)を施用する。土壌のpHが高い場合には硫マグ、低い場合には水マグが適当である。
なお、塩基飽和度と塩基バランスの数値はあくまで目安で、柔軟に取り扱う。例えば砂丘地のようにCECが小さな土壌の場合に塩基飽和度80%にこだわると塩基量の絶対量が少なくなってしまうので、塩基飽和度は100-120%でよい。
*1 後藤他『土と施肥の新知識』(農山漁村文化協会)