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  3. 『学問の自由が危ない』を読む 第二回

 『学問の自由が危ない』を読むの第二回です。 自分には内田樹氏が書いた『酔生夢死の国で』が問題の本質をきちんと明らかにした内容に思えました。前回の第一回では日本外国特派員クラブでの記者会見と『学問の自由が危ない』の前半のサマライズを行いました。

5 『学問の自律と憲法』木村草太(都立大教授/憲法学者)

  • 日本学術会議が編集協力する雑誌『学術の動向』2020年11号に寄稿したものを加筆・修正したもの。
  • 「首相には無限定の人事権がある」「その科学者は抗菌を使っている」という理由で政治が介入できるという前例になる危険がある。
  • 憲法23条の本質は「学問の自律性」。政治からの干渉・介入を防ぐことが目的。学問の自由の侵害。
  • 憲法14条1項「差別されない権利」の侵害も可能性がある。
  • 憲法15条1項、73条4項 公務員の任免権では任命拒否の根拠にならぬ。国会が決めた法律に従うべし。

6 『日本学術会議とジェンダー平等』後藤弘子(千葉大教授/法学者)

  • 日本学術会議の強みは多様性にある。
  • コ・オプテーション制度(会員及び連携会員の推薦)で女性会員が37.7%。LGBTQI提言など。
  • 低減が編集協力する雑誌『学術の動向』2020年11号に寄稿したものを加筆・修正したもの。
  • 日本学術会議は政府のどの組織よりも女性活躍を促進しており、多様性がある。

7 『日本学術会議と軍事研究』池内了(名古屋大学名誉教授/天文学者)

  • 日本学術会議が軍事研究に反対の意向を示し、大学等の研究者に対して学問の自由を奪っている論。
  • 日本学術会議が軍事研究対する声明を振り返る
  • 第一回総会声明「今後は、化学が分家国家ないし平和国家の基礎であると言う確信の下、わが国の平和的復興と人類の福祉増進のために貢献せんと誓う」
  • 第六回総会声明「戦争を目的とする科学の研究は絶対従わない決意の表明」
  • 研究費問題:潤沢な臨時軍事費を背景に「学問の自由がもっとも実現されていたのは太平洋戦争中だった」という意見。坂田昌一(物理学者:ノーベル賞)が学者の意識の低さを憤慨(1950年)。
  • 朝日新聞スクープ:物理学会などに米軍資金(DRPA)が流入。半導体国際会議にも米軍資金。物理学会決議「物理学会はは、今後内外を問わず。一切の軍隊からの援助、そのほか一切の協力関係を持たない。」
  • 世界的に科学者が軍事研究を行わない日本のような国は稀。
  • 第二次安倍内閣の「中期防衛力整備計画」で「防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技術)の積極的な活用に務める」→防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」
  • 日本学術会議の三度目の声明:過去2回の声明の継承し、「軍事的安全保障研究」は「政府による研究の介入が著しく、問題が多い。」
  • 著者の池内先生は三度目の「声明」は今までの精神を生かしたギリギリの判断と表現と評価。

8 『酔生夢死の国で』 内田樹(神戸女学院大学名誉教授/仏文学者)

  • 日本国の未来に対する危機感から、学者とは少し違う視点から発言したい。
  • 日本の学術的発信力を減殺するこの任命否認問題は日本の国際競争力を引き下げる。国民としての怒り。
  • 世界の学術共同体は深い憂慮を示している。座視することは、知的な誠実さに欠ける。
  • 例えば、COVD-19に関するデータを日本政府が公開しないことは、「集団的な知」の集結による問題解決よりも、「政府の無謬性」を優先していることに他ならない。(本当に日本政府は新型コロナのデータを公開していないとは思わないが。[山﨑])
  • ここが、政治と学術の間の価値観の違いだ。学術は無謬性に過剰な価値を付与しない。
  • 学問は仮設検証的に誤答を修正しながら進化していく。
  • この価値観の違いから、現実的には政治と学術がお互いに不干渉であることが比較的「ましな」関係。
  • きっかけは2017年に日本学術会議が「戦争を目的する科学の研究は絶対に行わない」という過去を継承しながらも政府に対して「緊張関係」という政治的なメッセージを出したからだ。
  • 官邸は学者が「矩を超えた」と判定したのではないか?今までと同じなのになぜ?
  • 「矩」=ルールが変わった。安倍・菅政権は「軍事研究」は政府専管事項と考えているのではないか。
  • 日本の最も安全という評価:日本の「軍人」が75年間、他国で一人を殺したことがない。
  • 第六回総会声明「戦争を目的とする科学の研究は絶対従わない決意の表明」
  • この学者の政治への干渉に対するお仕置きで、有史以来「よくあること」
  • 「学術を政治の下僕とする」政治のマインドセットは上位である政治的価値への貢献という文脈で考えると、合理性を見いだせる。つまり、「学術的発信力を削ぐ」のは政治的価値への貢献である。
  • 大学に対する制度改革は、傍目には失敗に見えるが政治的には成功だ。不条理だけど。
  • 学術を政治的支配体勢に組み込むことが、学術の発信力や人類の進歩に対する貢献よりも優先。
  • 政府は「(学術という)国力の数値を代償にしても手に入れたかったのは統治コストの最小化だ。
  • コストが優先?日本は「対米従属を通じての対米独立」以降、国家目標を失っている。
  • 日本の国連常任理事国入りも、アジア諸国の支持を得られず潰えてしまった。(小泉)
  • 安倍政権「対米自立はもうしている」しかし、対米自立にもう何も国家目標がもうない。
  • 今の日本政府「国際社会における客観的評価」<「国内の内閣支持率」
  • 政府による顧客は国際社会ではなく、選挙権をもつ国民である。
  • どうやって、誰一人トップに逆らわないような仕組みを作り上げるかという管理コストの最小化が問題。
  • そういう価値を生み出すかより、どういう組織であるべきかが自民党議員の関心。
  • 「管理コストの再消化は絶対善である」という刷り込まれた価値、WhatよりHow。日本の暗部。
  • 日本は「成し遂げるべきいかなる国家目標もないほど日本は成功した」というファンタジー酔生夢死。

9 『学術会議だけの問題ではない』 三島憲一(大阪大学名誉教授/哲学者)

  • 民主主義の議論は根拠と理由を挙げて行うことが条件。
  • 任命拒否違法行為だが、行政訴訟を起こすべきもの(勝ち目は少なが。。。)
  • なぜ、説明しないのか?これは二重の拒否だ。
  • 政府による民主主義の空洞化の危機であり、学術会議だけの問題ではない。
  • 統一前の西ドイツはお財布民主主義で民主主義を演じていた方が儲かるから。。。
  • ドイツは統一後には規範的民主主義とお財布が対立葛藤、規範が土俵際でどうにか耐えている状態。
  • かなり危ない無関心が日本に蔓延している。際競争力を引き下げる。国民としての怒り。
  • 世界の学術共同体は深い憂慮を示している。座視することは、知的な誠実さに欠ける。
  • 自分たちこそは日本のために働いているという妄想からくる上級国民意識。「こんな人ってどんな人?」
  • 安倍前首相@秋葉原演説「こんな人たちに負けるわけにはいきません!」
  • 権力はほんとに怖いがしかし、怖いのは隣人なりお互ひを見張る」(永田和宏)

10 『「学問の自由」どころか「学問」そのものの否定だ』永田和宏(京大名誉教授/生物学者 歌人)

  • 日本学術会議任命拒否問題は「学問の自由」の視点で語られることが多いが、学問の視点で語る。
  • 「学問とは何か」それは、文字通り「学んで」「問う」ことが本質だ。
  • 問いただす、つまり批判性を欠いては学問は成立しない。
  • 政府に批判的だからという理由で任命拒否を行うということは、学問に対する否定だ。
  • 同時に専門知の否定だ。菅首相は日本学術会議の委員を選べるほどの専門知識があるのか?
  • 菅首相は国会答弁で「加藤陽子先生以外知らない」と答弁。優れた業績を評価もせずに任命拒否。
  • 学問は何を目指すか?世界の人々の幸福に貢献する。
  • 永田氏は、世界の誰も知らないことへの挑戦がモチベーションの源という。前衛としての学問。
  • しかし、前衛としての学問の負の側面も否定できない。科学による社会の進歩に伴う新たな諸問題。
  • このような諸問題を解決するためにも科学技術は使われなければならない。後衛としての科学の使命。
  • 行政訴訟を起こすべきもの(勝ち目は少なが。。。)
  • 下村政調会長「軍事研究拒否なら、行政機関から外れるべき」←政府にとっては「獅子身中の虫」
  • 10億円もらっているなら、雇い主に反対するとは何事だ!ということなのだろう。

11 『文化適応としての科学と日本学術会議』鷲谷いずみ(生物学者 東大名誉教授)

  • レイチェル・カールソン「沈黙の春」科学的情報の公開が社会に与える影響
  • 環境の科学と環境保護の実践につながった。
  • これは科学という学問のプロセスに沿った方法論をとったからこそ人々に受け入れられた。
  • 日本学術会議学術会議の活動があまりにも知られていない。

12 『1000を超える協会の抗議声明から読み取れること』津田大介(ジャーナリスト)

  • 今回の日本学術会議任命拒否問題は第二次安倍政権からつづく「解釈」や「閣議決定」で憲法や法律に違反することを押し切ってきた8年間の政治劣化を象徴する出来事だ。
  • 問題を指摘されても真正面から答えず時が過ぎるのを待ち、国会は出来る限り開かず、時を見て国民感情をリセットするために選挙行うことで、国民を忘却や諦めの境地にさせてきた8年間。
  • 日本微生物学連盟の声明にこの問題の解決の糸口が見える。コロナ渦を例に日本学術会議の現在的意味。
  • これは科学という学問のプロセスに沿った方法論をとったからこそ人々に受け入れられた。
  • 日本学術会議学術会議の活動があまりにも知られていない。

『日本学術会議任命拒否問題の渦の中より』芦名定道(京大教授/宗教学)

  • 6年間の連携委員としての経験。意味はあったが、研究活動に不可欠というわけでもない。
  • 多くの人が拒否された法律家のなかにやや異質な印象人(宗教学)が混ざっていたと感じたのではないか
  • 内閣府が何年もかけて積み上げてきた帰結。問題は。日本学術会議にいよる「軍事研究批判」
  • 科学技術は国家の浮沈ん直結するので、国民一人一人と無関係ではない。

 私自身(山﨑)がおかしいなと思うのは、なぜ法学者の先生方は違法状態を放置しているのかという点です。違法であるなら、訴訟を起こし裁判を通じて違法状態をやめさせるべきだと思うのですが。。。実は、日本では『「違法な」総理による裁量権の行使を是正する手段は存在しない』のだというショッキングな事実。

なぜ、法学系の研究者たちが集まって、この点まで踏み込まないのか。これまた疑問である。反政権の「ネタ」としてならば、たしかに第2フェーズの法律論で各々が思い思いに「違法」「違憲」というところでとどまってもいいが、真に日本の立憲主義を貫徹しようとするならば、制度論まで立ち入って、具体的な提言をしなければならない。

すなわち、今回の問題が違法であったとしても、これを是正するシステムが、わが国の法体系にはビルドインされていない。したがって、デモをするか、共同声明・記者会見を出すかという手段はあるにせよ、強制的に「違法な」総理による裁量権の行使を是正する手段は存在しないのである。

具体的には、大きくは特別の行政裁判所や憲法裁判所を創設したり、のような国家機関同士の争いを裁定する機関訴訟の形態をより広く法律で認めていったりする方法がある。

東洋経済ONLINE 『「学術会議問題」致命的に見落とされている視点』 2020/10/15 倉持 麟太郎 : 弁護士https://toyokeizai.net/articles/-/381769?page=4

 ドイツの知識階級は戦中のナチの拡大を止めることができなかった強烈な反省から、考えるだけではなく、実際に行動する重要性を再認識したという話を思い出した。例えば、ニーメラ牧師の有名な詩「彼らが最初共産党員を攻撃した時」がある。この『学問の自由が危ない』には各種団体からの抗議文も掲載されている。映画監督やプロデューサーの連名の抗議文のなかに、このニーメラーの詩が紹介されていた。

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