『学問の自由が危ない』を読む 第一回

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 娘の推薦図書『学問の自由が危ない』を読む。昨年突如として勃発した日本学術会議任命拒否問題に関する図書である。菅首相によって任命されなかった6名は以下のとおり、

  • 芦名定道(京都大/キリスト教学者)
  • 宇野重規 (東大/政治学者)
  • 岡田正則 (早稲田大/法学者)
  • 小澤隆一 (慈恵医大/憲法学者)
  • 加藤陽子 (東大/歴史学者)
  • 松宮孝明 (立命館/法学者) (あいうえお順)

 昨年の10月23日に日本外国特派員協会での任命されなかった6名のうち4名+現日本学術会議会員1名(高山:京大/法学者)、の記者会見の様子をYouTube経由でノーカットで見た。その感想は、法学者が法律論や手続き論で違法を主張し、早稲田の岡田先生は会員の任命を総理大臣の権利ではなく、任命義務という主張をしていた。そのなかで、宗教学の芦名先生は「日本学術会議と軍事研究の関係」という問題提起を行い、今後もこの問題を考えていきたいとした。以下、記者会見のサマリー。

  • 高山先生:違法行為。日本学術会議法第3条,第7,第26条で内閣総理大臣に会員を選ぶ権限ない。
  • 小澤先生:憲法23条学問の自由。任命拒否は日本学術会議の目的と職務を妨げるものだ撤回せよ。
  • 岡田先生:違法。①日本学術会議の独立性の否定(憲法23条違反)②日本学術会議法第7条,第17条違反また、過去の国会答弁と矛盾 政府見解は憲法15条1項を根拠に内閣総理大臣の任命権を主張。しかし、法的には会員の任命罷免権は日本学術会議で内閣総理大臣ではない。③行政手続きもダメ。菅総理が「日本学術会議からの名簿を見ていない」つまり、日本学術会議の推薦に基づかない判断。これは日本学術会議法第7条2項に対する違法行為。菅総理は任命「義務」(カッコ山﨑)を履行せよ。
  • 松宮先生:違法。①6名定員不足は日本学術会議法題7条2項違反②政府は憲法15条1項任命罷免権を根拠にしているが、これは非常に危険③本件に関係して犯罪が行われた可能性。代表的には「日本学術会議が中国の軍事に参加している」というデマ。候補者リストの黒塗りは公文書に対する罪。
  • 芦名先生:問題の核心は日本学術会議と軍事研究の関係。違法性も問題だが、大きな流れが問題でそれを多くの人たちと考えていきたい。

 さて、本題の『学問の自由が危ない』だが、編者の佐藤学(東大名誉教授/教育学者)、上野千鶴子(東大名誉教授/社会学者)、内田樹(神戸女学院名誉教授/仏文学者)他10名による。以下サマリー

1 『学術総動員体制への布石』上野千鶴子(東大名誉教授/社会学者)

  • 独立性を求められるところに手を突っ込んできた前安倍政権を踏襲。日銀の黒田総裁、NHKの籾井会長。
  • 共産党員へのレッドパージ以上のアカデミックパージが展開される恐れ。ファシズムまであと一歩。
  • 閣僚が「日本学術会議から答申出てない」。しかし、政府の諮問が出ていないので答申は無理ゲー。
  • 政府は多様性がないと言うが、女性の参加は日本学術会議(37.7%)は衆議院議員(10.9%)より多様化。
  • 異論排除は学問の死である。

2 日本学術会議における「学問の自由」とその危機 佐藤学(東大名誉教授/教育学者)

  • 政権トップがアカデミー会員の任命拒否するのは、ファシズム国家か全体主義国家の独裁者。
  • 違法である。日本学術会議法、憲法23条
  • 学問の自由の原理:民主主義は学問の自由の成立基盤。学問は支配権力に危険な存在。ソクラテス毒殺刑
  • ブタペスト宣言:学問の自由と学者の社会的責任 「得た知識を人類の必要と希望に適用させる」
  • 菅首相は「学問の自由とは関係ない。学者は自由に研究して良い」と言ったが、それは無知。学問の自由とは政治権力からの自由が本質である。

3 対談『政治が学問の世界に介入してきた』長谷恭男(早稲田大/法学者)x杉田敦(法政大/政治学者)

  • 政治主導の名の下、不当介入を繰り返した安倍政権を菅政権は継承(杉田)
  • 任命拒否された歴史家の加藤陽子先生が、法改正によって研究者が「資金を得るのと引き換えに政府の政策的な介入」を受けかねない。今回の件は正にそういう事態だ。(杉田)
  • 「日本学術会議は内閣総理大臣の所轄」。所轄は管理や監督に較べ弱い。法律を読んでいる?(長谷)
  • 前にも補欠人事で官邸から干渉があった。当時の会長が公にはしなかったが。(杉田)
  • 大学の自治が侵食される恐れ。特に学長人事や教授人事。

4 任命拒否の違法性・違憲性と日本学術会議の立場 高山佳奈子(京大/法学者)

  • 日本学術会議側の対応を詳細に記録。
  • 違法・違憲については、基本的に10月23日記者会見の内容
  • 今は違法状態。違法性阻害事由がない限り正当化できない。つまり、正当防衛や緊急避難のように任命拒否によって生じる法律違反を許容しなければならないほど、他の重大な害を回避する切迫した必要性がある場合でなければならないとは言えない。これは、単なる違法行為である。
  • 任命拒否事件は国際社会における日本の恥である。

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